先にゴールラインを割った俺はがそこに着くのを待っていた。彼女はナイトキッズに入っているものの特別車の運転が上手いという訳ではなかった。だからこうしてゴール地点でタバコの煙をくゆらす時間すら出来てしまう。しかしそれでも苛立ったりはしない。特段、俺だけが彼女を甘やかす訳ではなく、まあ男というのはそういうものだった。男の集団に女が一人となればそれは余計にだった。 中里の横に車を停めたは、先週よりも煙草が長いと嬉しそうに言う。つまりタイムが縮んだということだ。その結果にではなく、彼女のそんな仕草に中里も思わず顔がほころんでしまう。 それでも、喜ぶ彼女がステアリングを握る手がいつもよりも色っぽくて、その理由が艶めくピンク色に飾られた爪だということに気がつくと途端に何か冷たい感情が胸の中を遮り覆う。この彼女の喜びようも、単に走りが上達したからではなく、他に何か良いことがあったからではないかと。 気がつくと彼女の手首を乱暴に掴んでいた。当たり前のように疑問の言葉を投げ掛けてくる彼女の上目遣いが憎い。 「なんだこの爪は」 「マニキュア塗ったんです。駄目ですか?」 駄目だと言いたいんじゃない、そんなことどうだっていい。しかし手に取った彼女の細い腕のやり場がなく、だんだんと汗の滲みはじめた自分の手のひらが嫌だった。 ただのメンバーだ。彼女とはそれ以上の接点はない。 彼女のことをもっと知ろうとしなかった自分を悔いた。この掴んだ手首のもっと先にある、爪先を美しく染色された白い指に絡まる指は、自分のものではなく、他の誰かのものなのかもしれない。それを想像して、今自分のしている荒々しさとはいったい何なのだろう。 中里は静かに彼女の腕を離した。いつの何か彼の口から離れ落ちたタバコが地面で尽きている。 もともとゆるいむすびつき
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