静かに呼吸する音が聞こえて、私は天井を仰いだ。もうそこに五右ェ門の顔はなくて、彼の頭は私の肩ごしにすっぽりと収まって時折鎖骨に食いついている。だから、私がどんな顔をしていようと、彼の知ったこっちゃない。

「私が昔どんなだったとか、そんなのをひけらかして理解して欲しいとすがるほど、もう私は若くない」

 ポツリと呟いて、五右ェ門の背中に回した手を彼の後頭部の当てがう。彼はすぐに察して、首筋から唇を離すとそのまま優しい口付けを交わす。
 本当はわかってほしい。こうして彼を求めて肉欲が満たされても、満たされない部分が露見して虚しくなるだけ。
 こんな造作、本当はどうでもいいのだ。もっと少女を扱うように全てを抱きすくめられたいだけなのに、そんな甘えたことを言うにはもう歳をとってしまった自分は、もう一生このじりじりとした気持ちを押さえ込んでいかなければいけないのだと思い、目を閉じる。それがとても怖かった。温かい温度に包まれながらも感じる孤独が、いつまでもいつまでも。
20141227 くべる