怠惰だ。
 私は心の中で静かに叫び、震え、隣で横になる男の肌にぴとりと己の肌を寄せた。この表皮から伝わる体温を、あの人ものだと仮定して、より一層抱き締める。抱き締め返してほしいと、ねだる。

「私って、綺麗でも可愛いでもないのに、どうしてなんだろう。容姿って女である上で大事なことだと感じるの」
「君みたいな子が一番話やすいんだよ。手の届く花って言うのかな」

 私だって、そんなことわかっていた。私だって、中里さんがほしかった。でも、手に届かない。走りにしたって彼に釣り合うものを何一つ持っていない私は、自分の本心を裏切るようなことをしている。そうして自分を慰めている。
 彼は、手に入ってしまうものなんて手に入れたくない人だ。それに立ち向かおうとしない向上心のない私はいつまでたっても芽を出さない、種のまま腐ってしまう。
20150105 天来 Sky Ruins