目の前でうんうんと悶える彼女を見下す。脅される訳でも縛られる訳でもなしに、彼女は闇の中で白く浮かび上がる布団の枠の中で、まるで降参の格好をしているようだ。あられもなく開かれた股の間に、拙者の突き立てる肉棒を惜しみなく受け入れている。
 昨晩、彼女は敵に捕らわれ、拙者の居所を吐けと拷問を受けた。しかし、あれを拷問と呼べるのだろうか。拙者はそう疑わずにいられなかった。

 捕らわれた彼女を救出するべく乗り込んだ敵地は、薄暗く、湿度の高い、それ以外は特筆すべき点のないただのコンクリート製の建物だった。しかし、そのコンクリートに反響する彼女の悲鳴のような嗚咽は、ただ事ではないことを示していた。聞きたくないと思いながらも、その声を辿ることでしか、彼女の居場所に辿り着く方法はなかった。そして息を殺して扉の隙間から目にした、彼女が男たちに玩弄されている姿。
 はじめこそ怯んだものの、自分以外の者に犯される彼女の姿から、目が放せなかった。オレンジ色の電球に照らされる柔らかそうな太ももや腹には、汗なのかその他の何かなのか、てろてろと艶めかしく光を帯びていた。寝かされているテーブルの足に両手両足をくくられ、身動きできない状態の彼女は表情を苦悶とさせている。
 たった今、彼女と結合してピストン運動を繰り返していた男が、息を詰まらせるような音を出した直後、彼女の股から自身を抜き出し、彼女の顔の方へと精液をほとばしらせた。彼らの間には、言葉は何もなかった。『五右ェ門の居場所を吐け』。そんな言葉やそぶりは、どこにもなかった。彼女ですら、隙あらば反撃をしようだとか、そもそも抵抗する素振りすら伺えなかった。
 彼らは最早、この輪姦状態に酔いしれていた。

「ごえっ、もっ・・・!」
 いつものように達することを知らせる為に拙者の名前を呼ぶ彼女を、愛おしく思えずにいる。昨晩あんなに犯された穴は、痛まないのだろうか。この穴に幾度となく抜き差しされた、幾人もの男のそれと、拙者のそれとが区別できるのだろうか。

 そろそろ頃合いかと、ドアを斬り破り部屋に入り、男たちを斬り捨てた後に彼女に施された手足の拘束を解いた。彼女には涙を流した跡が見えた。その表情はなんとも満足気であった。
 彼女はゆっくりと状態を起こし、拙者の差し出した着物を羽織りながら、『ごめんなさい』と呟いた。その謝罪は何に向けられたものだったのだろう。そもそも敵に捕らわれてしまったことに対してだろうか。それとも、男たちにこのような扱いをされたことへだろうか。はたまた──男たちとの行為に悦びを覚えたことへの、謝罪なのだろうか。

 達してもなお挿入を繰り返す某に、彼女は嬌声を上げながらしがみついてくる。男たちに輪姦されてしまったことに某が嫉妬心を燃やしていると、きっと彼女は思っているのだろう。だから、普段達した後に要求するしばらくの静止も、今は要求してこない。なんとも、傲慢で、はしたない女だ。
 そんな女のうずく子宮へと、ぬめる熱い毒を吐き出した。


暗い愉に身を委ね
title: 天来 // 20160905