この冷たく硬い独房の中で、君のことをふと思い出すことがあっても、その想いは吸魂鬼のかっこうの餌となって、すぐにその淡い想いも消えてしまうのだ。ある日君はここにきて、僕を助け出そうとしたね。そうして、吸魂鬼に魂を吸われてしまったね。吸魂鬼を目の前にしていると、そんなことがあったなんて忘れてしまう。それでも僕はやっぱり人間だし、世の中がどれだけ僕のことを酷い人間だったと思っていても、君のように僕を慕ってくれた人間がいるのだ。そのこで自分の存在意義を見失わずにいられたし、とても心がくすぐったく思うこともあったんだ。もうあの頃の僕たちは消えてしまって、戻れない。でも僕は君との思い出を決して忘れないし、忘れても僕の心はその感覚を覚えてる。だから僕はこうして冷たく硬い独房の中で、今でも君のことを思い出している。

僕に翼が生えた日
彼女が眠る椅子