いつもあなたの腹に忍ばせている小太刀を手首にあてがい、そこから流れていく赤い涙を指で掬い取る。よく切れる滑らかな刃は、私が今までに経験した刃物のような切れ味と痛みではなく、ほんのちょっとした感覚をもよおすだけでいとも簡単に薄い表皮を裂くのだ。力を加えずとも、その己の重さで肉に沈み。私はそっと、自分の血液のついた人差し指を障子に添えた。向こうからセピア色に照らされていた白い紙に、赤色が染みていく。薄暗さにその赤色も黒く見えて、すぐに障子紙は私の血液を吸い込んで、少し力を入れて触れるだけで破れてしまった。そうしてそこにできた赤い縁取りの覗き穴に目を這わす。そこから見える一組の男女。つらかった。あなたを想っているのは私なのに、こんなにも愛しているのに、愛されていない、あなたの愛している人が私でないだけで、私のこの行動は全て狂気だと言って。愛させたのはあなたなのに。


殺戮前夜