さん……?」

 斑目先輩はひどく困ったように私の名前を呼んだ。
 私はその言葉を、その名前を呼んだ口から流れる息を頬に感じながら受け止め、その顔をじっと見つめている。

「斑目先輩。もし私以外の女性がこんなふうに近付いて、キスしようとしても、拒絶してくださいよ?」

 そう言って、わなわなと震える、何の準備もできていないといった彼の唇に自分の唇を寄せていく。
 優しく触れた1回目。そしてもう少し圧をかけて2回目。それから3回目は、と息継ぎをして最接近する私の肩を、斑目先輩はそっと掴んで強く押し返す。

「まってよさん。俺たちってそういう関係だったの?」

 もうこの2回のキスで精一杯といったように茹蛸になっている彼は必至に確認する。

「気付いてないなんて言わせませんよ。私、ずっと斑目先輩のことが好きなんです。私をそうさせた斑目先輩には責任があると思います。故意でなかったとしても、十分に過失はあります」
「責任とか過失とか、そんな脅迫みたいなこと」
「今のは脅迫じゃないです。脅迫はさっきしたじゃないですか。他の子とこんなことしないで下さいって。でも斑目先輩は優しいから、他の子にも私と同じように優しくするだろうし、迫られたりしたら断れないんでしょうね。さっきだって、確認する前に2回もキスしちゃったじゃないですか。これから先が不安だなあ」

 私はそういいながら、既に半腰状態で座っていた部室のパイプ椅子から立ち上がり、斑目先輩の座っているパイプ椅子に片方の膝をのせた。ショートパンツの下から出る薄手のタイツを履いた太ももはパイプ椅子のビニールでできた座面の上をじりじりと移動して、斑目先輩の両足の間に収まっていく。
 細見の彼の身体にはサイズの合っていない少しだぼついたジーンズに触れる感触がして、さらにそこから膝をすべらせ、彼の本体にぐっと膝を押し付けた。

「今から先輩のお家、行ってもいいですか?」

 身体を熱くして震える斑目先輩の肩に顎をのせ、耳元で囁いた。


それで、きみはどうするの
20181127 / title by scald