小刻みに震える太もも
内股になる足
擦り合わせた膝
股間を握った拳
自然と揺れる腰
噛み締めた唇new
涙が溢れる瞳
紅潮したほっぺた
汗の伝う背中
先から溢れる、水





 
「暑い……」

 は暑さに声をあげた。
 それまでは五右ェ門の愛撫に細く息を吐いていたが、声が外に漏れぬようにと扉や窓を閉めた室内はカーテンから透ける日光の熱と二人のいつもより上昇している体温によって暖められていた。

「汗をかいていた方が体が滑る。心地良い」

 特に、こんな時の汗は。
 鍛練をしている時のような汗ではなく、こんな時の汗は甘く匂い、オイルのようにぬめりを帯びている。愉悦を感じて滴る体液は、股のあわいから溢れ出るばかりではないようだ。
 膝を立て仰向けになっていた膝の裏の汗がそこに留まりきらずに太ももの裏を伝っていく。わきの下や胸元にも同じように汗の水滴が浮かんでいるのが想像できた。
 五右ェ門はの胸元に唇を這わせ、少し強く吸い付いた後に舌で汗を舐めとる。は息を深く吐いた。
 それから五右ェ門は徐々に舌を腹の上、臍の下まで移動させていき、の足を開こうとして膝に片手を添えると、膝裏から流れる汗に気付いたのか、足首を持って足を上げさせた。
 折っていた足がまっすぐに伸ばされると、膝裏に溜まっていた汗が一気に太ももへと滴る。五右ェ門はその汗を、裏ももの、太ももの付け根の方からすーっと舐め上げていき、膝の裏までぺろりと舐めると喉を下ろした。
 はたまらずに腿を震わせ、同じように震えた女陰から汗とは違う、もっと粘度のある液体が溢れる。

「もうだめ、入れて」

 そう言えば五右ェ門は膝裏を舐めていた下をまた太ももの付け根の方に移動させ、そのままの股の間に持っていく。
 胸元や太ももを舐めていた時は柔らかかった舌が、芯を持っての女陰に入り込む。指でも男根でもない独特な感触の舌が、同じように肉のような女陰の内側をちろちろと擦り上げていく。舌の表面のざらざらとした感触に無意識に内ももに力が入る。

「あっちも、入れてほしいの」
「わかっておる」

 五右ェ門が両手での両膝を開く。は待てずに寝ていた頭をもたげ、五右ェ門の起立した男根を掴むと自らの女陰に導いた。
 五右ェ門の足の付け根に溜まっていた汗が、の肌に当たって弾けた。五右ェ門の汗は熱く、に入り込む肉棒は更に熱く、は下半身から急激に熱せられる。
 が五右ェ門の頬に両手を添えれば、五右ェ門の方から上体をの体に添わすようにし、どちらともなく口を寄せ、唇よりも先に舌と舌が触れ合う。汗なのか愛液なのか、五右ェ門の舌は少ししょっぱい味がした。
 五右ェ門の舌を伝って流れ込んでくる唾液を全て受け入れ、自分の唾液と共に飲み込み、はまた強く息を吐き、同じくらい深く息を吸い、声を上げた。

小刻みに震える太もも
 
 寒空の下、美術館の近くの雑木林の中で、は五右ェ門と身体をぴたりと合わせ、接吻をしていた。
 ルパンと次元は現場に潜入し、と五右ェ門は万一の為のサポートとして待機していたところだった。最初は大人しくしていたが、手持ち無沙汰になり、は五右ェ門に身体を寄せた。最初は肩が触れ合う程度だったが、そこから抱き付き、匂いを嗅ぎ、見上げれば五右ェ門の顔があり、自然と唇を寄せていた。
 そうして今では五右ェ門と胸を合わせるような形で抱き合い、五右ェ門は顔を下げ、は顔を上げる形となり、もう幾分か濃密な口付けを繰り返していた。
 しかし、は急にざわついた耳元に身体を強張らせた。
 耳にはめ込んでいた小型イヤフォンからルパンの声が聞こえた。応援の合図、つまり失態を犯したということだ。
 すぐには待機していた木陰から出ようとしたが、抱き合っていた体勢のこともあり、そのまま五右ェ門に抑え込まれる。

「どうしたの?応援は?」

 そう問うても、雑木林の間から漏れる月明かりに照らされた五右ェ門の表情は変わらず、の頬に手をあてがうとそのまま顔を引き寄せ、接吻を再開した。

「もうおしまい。ルパンが呼んでるのよ」
「拙者には聞こえておらぬ」

 そう言った五右ェ門の両耳を交互に見れば、の耳にもはめ込まれているイヤフォンはどちらの耳にもはめられていなかった。
 そのことを咎めようとすると、また五右ェ門は顔を近付けてきて、は顔をそむけた。しかし五右ェ門の口が狙っていたのはの口ではなく、耳を捉え、は思わず声をあげそうになる。
 イヤフォンから流れてくる、ルパンが警備員なのか警察と揉めている騒音に重なって、五右ェ門の舌が耳をまさぐるぬちゃぬちゃとした音が聞こえる。
 五右ェ門はひとしきり耳を舐めると、耳を舐められたことに少し放心状態になって力の抜けているの耳からイヤフォンを抜き取った。

「ちょっと!どうしちゃったの?」

 五右ェ門はイヤフォンをそのへんに放ると、徐にの胸に手を当ててやわやわと揉み始めた。

「そなたが可愛く接吻などしてくるからだ」
「こんなこと後からでもできるでしょ!ルパンは?作戦失敗したのよ?」
「ルパンたちなら勝手になんとかするであろう」

 また何か言おうおしたの口を五右ェ門は口で塞ぐと、の服の下に手を滑り込ませ、ブラジャーのカップを少し引き下げると胸の頂を指先で転がし始めた。
 は講義の声を出せぬ代わりに僅かな喘ぎ声をあげ、五右ェ門の着物の裾を握り締めた。そうでもしないと、例え人などめったに来ない雑木林の中とはいえ、嬌声をあげるのは憚られる。
 五右ェ門はしばらく胸を愛撫した後、手を下の方へもっていき、の履いているジーンズのボタンとジッパーに手をかけた。そのことでの崩れかけていた理性が僅かに復活し、は五右ェ門の手に自分の手を重ねた。

「流石にここは無理!」
「今日は星も綺麗に見えておる。たまにはよかろう」

 五右ェ門はそう言うとを近場にあった木の幹に押し付けるようにしてジーンズを太ももの中ほど辺りまで下げた。急に外気に晒された肌が鳥肌を立て、五右ェ門はその鳥肌を味わうかのように触れるか触れないかの微妙な感覚で露出した肌に指先を滑らせた。
 それからのショーツに手をかけ、そっと下ろすと陰毛を掻き分けるように指を女陰に忍び込ませる。は覚悟も決まらず、寒さに耐えるように精一杯に閉じようと足が内股になる。しかしそうすることで、既に女陰に到達してしまった五右ェ門の逞しい指を自ら押さえ込むことになってしまう。

「そう力むでない」

 五右ェ門がそう言って、最初にびたびたに嘗め回された耳とは別の耳を舐め始めた。
 はまた溜まらず声を押し殺し、顎を上げた。無意識に瞑っていた瞼を開ければ、五右ェ門が言っていた通り、星が綺麗に瞬いている。
 の女陰はしっとりとほぐされ、ジーンズは完全に下ろされぬまま、は背中を向けていた木の方へと身体の向きを反転させられる。五右ェ門の衣服を解く音がして、肩にかけたままになっているのであろう五右ェ門の着物がに背後から覆いかぶさる五右ェ門ごと包むように垂れ下がっている。
 五右ェ門のものが入りやすいようにとが腰を少し突き出せば、見下ろした自分のつま先が内側を向いていて、なんともはしたない。
 五右ェ門は星が綺麗だと言っていたのに、この体勢では全く星は見えない。夜空に瞬く星を見れたのは一瞬だったが、五右ェ門の力強い男根に後ろから突かれる度に、の膣は瞬くように収縮を繰り返した。

内股になる足
 
「気持ち良いよ、気持ちいんだけど」

 の中から引き抜いた自分の肉棒を手で握る斑目。
 こんなことは珍しいことではない。初めこそ斑目は生で目にする女の肉体に興奮しているようだったが、その時は緊張なのか、単純に初めてで慣れていなかったのか射精まで至らなかった。
 そして今日も、彼は逝き切れず、横たえて息を切らして仰向けになっているを見下ろす形で膝立ちになり、自分のイチモツをやわやわとしごいている。
 何度かこういうことがあり、その時に説明してくれた。自慰行為のし過ぎで、挿入ではピンポイントに自分の快感を狙えないのだろうと。
 手をスライドさせる度に装着されているコンドームに皺がよる。

「気にしないで下さい。別にエッチできてない訳じゃないんですし」

 はそう言うと斑目さんの手を肉棒からどけ、コンドームを取った。
 コンドームの中は白濁とした液は出ていないものの、透明な分泌液は幾分かでているようで、ぬめぬめとしていた。はそれを舌で舐め取る。薄い塩味がした。

ちゃん、いいよ。イちゃって疲れてるでしょ」
「私だけイクなんて嫌。斑目さんにもちゃんと気持ち良くなってほしいもん」
「だから、気持ち良くない訳じゃないんだって。好きな子とエッチできるなんて幸せだし……」

 最後の方は小声になりながらもそう言った斑目の言葉に、は膣がきゅんきゅんと疼く。先ほど絶頂を越えたばかりなのに、の体はまた快楽を迎える準備を、準備どころか渇望している。
 は斑目さんの男根から口を離すと、斑目に向き合うように座り直した。

「斑目さん、自分でしてみてください。よーく観察するので、それを真似してみます」

 先程は自分のものを無意識にさすっていた斑目だったが、さすがに人に自慰行為をみせるのには羞恥心を覚えたようで、うろたえている。
 二人で一緒に気持ち良くなる為です、と私が説明しても一向にしてくれる気配がないので、は閉じていた両足を開いた。

「じゃあ私もしますから、お互いに見せ合いっこ」
「そんなの、卑怯だよ」

 は斑目が抗議しているのを無視して、自分の秘所を人差し指と薬指で広げ中指でクリトリスを優しく擦り上げる。斑目はその様子から目を逸らそうとするものの、逸らすことはできず、彼女の器用な指使いと恍惚とした表情と声に見とれていた。
 そうすればそのうちに、少し元気を失っていた斑目の男根も起立し始め、斑目は手で自分のモノを握った。
 まだ潤いを失っていなかった肌を手が上下にスライドする。皮がぐにゃぐにゃと動き、裏筋の様子が良く見えた。はそれを見るとますます興奮し、左手でクリトリスをいじるのをやめることはせず、右手の指を2本まとめて膣に入れた。

「私は、両方一緒にされるときもちぃのー」

 ははしたない声でそう言い、斑目さんを見据えた。斑目は何も言わず、先程よりも強く男根を握り締めているようだった。時折、亀頭の先から流れる体液を手のひらに取ってはそれを塗り広げるように握った手を上下させていく。

「あ、だめイキそう。斑目さんの入れたい」

 は一旦、秘所を弄るのをやめ、尻を上げて身体を斑目の近くへ寄せた。お互いの足がぶつかり、と斑目の生殖器がすぐ近くにある。

「俺も、なんかイキそう、かも」

 は斑目のその言葉を聞き逃さず、口付けるとそのまま彼の身体をそっと押し倒し、十分にぬめりを帯びている斑目の男根を自分の膣へと滑り込ませた。
 斑目に絶頂を向かえてほしくてした自慰の見せ合いだったが、十分に興奮してしまったは斑目のモノを咥え込んだだけでも相当の快感を得た。
 しかし既に絶頂を迎えた身体は2度目の絶頂には物怖じせず、まるで腰が勝手に動いてしまうかのようには腰を上下に動かして斑目の男根を抜き挿したり、グラインドさせればクリトリスが斑目の男根の付け根や陰毛と擦れ、次々と快楽が溢れ出して止まらない。

ちゃん駄目だよ!もう、イク!」
「いいよ!イッて!」

 はコンドームをつけていないということも気にせず、構わず腰を動かし続けた。
 身体を支えていた手を使って自分の胸を揉み、乳首を指で挟んで転がした。乳首と膣との2つの点が線で結ばれ、そうしてリンクすることで更に快感が増す。瞼を閉じれば快楽の扉がすぐそこに見えて、あとは開けるだけだった。
 夢中で腰をグラインドさせていて気付かなかったが、斑目の発した喘ぎ声で、彼が射精したのだとわかった。しかしはまだ最後の絶頂を迎えておらず、そのまま腰を動かす。膣の中に放たれた精液がかき混ぜられ、膣の収縮によりじわりじわりと滲み出てきて二人の結合部がぐちゃぐちゃになっていく。
 は何度目かの絶頂を迎え、斑目のごつごつとした胸の上に身体を下ろした。

「斑目さんも、イけたね」

 すぐにでも眠りに落ちてしまいそうな気だるさの中でそう言って唇を尖らせれば、斑目は苦笑いしながらものキスに応えた。

股間を握った拳
 
 ああ、私はどうしてこうなってしまったんだろう。
 元はと言えば、不二子の代役として私を起用したルパンがいけないんだ。私に不二子の代役が務まる訳がない。美貌も経験値も段違いなのだから。

「怯えてるのかい?かわいいね、大丈夫だよ」

 私はベッドを背後にし、もうどこにも逃げられなさそうだった。目の前の男を殴り倒していいというのならそうしたが、ルパンが時間稼ぎをしてほしいと言っていたのでそうもできない。
 不二子なら頭のキレの良さに相手を言葉だけでとろけさせ、しかし肝心なところには触れさせないようにするのだろうが、私にはそんな芸当できっこなかった。

 ついに私はベッドに腰を下ろしてしまった。もうこうなったら、本気で嫌がりたいところだが、控えめに嫌がってまんざらでもない演技をして時間を稼ぐしかない…。

「会ったばかりの男とするのに抵抗があるのかい?何も遠慮しなくていい。お互い大人なんだから」
「でも……私綺麗じゃないし……」

 自分でも何を言ってるのかわからなくなってきた。とりあえず差し支えのない言葉を言ってみてはいるが、状況と態度と言葉がズレてはいないだろうか。
 いや、もう目の前の男はただ性交したいだけのようだ。言葉など不要のようだ。
 
 しかし、男に求められるのは実に久しぶりだった。求められると、自分が女だということが再確認できて優越感を覚える。心地が良い。
 それでも、いざ首筋に吐息がかかると全身が硬直した。声が出そうになったが、思わず唇を噛んだ。
 本当は望んでいないはずなのに、快楽なのか好奇心なのかわからないものに流されてしまいそうだ。

「全て任せてくれればいい。快楽に身を委ねる女性の姿は、とても美しいから」

 ベッドに横たえられた私は全ての力が抜けて、抵抗もなにもする気など起きていなかった。
 忘れかけていた、壊れ物のように扱う手の感触。今この世界で、自分だけが大切にされて、唯一無二なのだという優越感が全身を痺れさせてたまらない。

 だが不と瞼を開けた先の窓越しに、彼の姿が見えた。五右ェ門の姿が。
 一瞬頭を思いっきり殴られたかのような感覚になり、何も考えられなくなった。咄嗟に、快楽をもらし始めていた唇を噛んだ。
 の強張った身体に気付いたのか、上から組み敷いている男の愛撫が強くなる。こんな姿を五右ェ門に見られているだけでもたまらないのに、眉間に皺を寄せずにはいられない。
 どうして彼は窓越しに眺めるばかりで、止めに入らないのだろう。このまま、私の中に男の肉棒が忍び込んでくる様を見るつもりなのだろうか。

 そこではっと気付いた。時間稼ぎをしてほしい、ということは、つまり“こういうこと”だったのか、と。
 五右ェ門と床を共にしたのはいつだっただろうか。五右ェ門は、目の前で知らない男によって快楽を与えられている自分の女を見て、美しいと思ってくれているのだろうか。この快楽の渦に吸い込まれていく美しさを、自分だけの物にしたいと思ってくれているのだろうか。
 いつまでも窓の向こうで表情を変えずにこちらを見ている五右ェ門にだんだん腹が立ってきたは、噛み締めていた唇をほどき、快楽に負けただらしない声を上げ、男の腰に手をのばした。

噛み締めた唇
title by Topicpeeing「体で十題」
20190402 小刻みに震える太もも, 内股になる足
20190411 股間を握った拳