今、目の前で死にゆく彼女を救えなかった自分が、情けないだとか憎いだとか、そんな言葉では言い表せないくらいに嫌いで、彼女に触れるのが怖くて、私は強く握り締め、小石の転がる地面に叩きつけるように伏せた拳を、涙を堪えるぼやけた視界で見据えるだけで。彼女の呼吸は、まるで静かで、それはとても弱っているからで。そのか細い息の音が、風の中で揺れていた。

 「私、アナキンが憎い。アナキンを見出したクワイ=ガンも嫌い。アナキンを認めた評議会の人たちが、嫌い」

 彼女はそう言って、次第に嗚咽が混じり、顔についた砂埃や血液を洗い流すように涙を溢れさせ、泣いて。それによって、私の涙を堪えていた理性の糸が切れ、地面に突きつけた拳に無数の水滴が落ちていった。

 「あなたのことも嫌い。アナキンを育て、教え」

 力んだ彼女の手は、地面を掻くようにして土を掬う。

 「ジェダイと呼ばれるようになった時、別に死なんて怖くないと思った。銀河の平和が守られるならいいと思った。でもあなたのせいで、私はこんなにも弱くなってしまった」

 彼女の手が、土を掴みながら私の手に触れ、涙に混じって泥になっていく。彼女の手にも、私の涙が落ちて、その感触に私が泣いていることを知らせてしまう。私も、こんなに弱くなってしまった。むしろ、初めから強くなんてなかった。君がいてくれたことで、守る存在ができたことで、強くなったようにただ仮想していただけだった。

 「あなたは強いから、私が死んでも生き続けるのでしょ」

 強くなんてない。ジェダイ・マスターになってから幾年かが過ぎ、いくらライトセーバーの扱いが上手くなろうと、私は何も変わっていない。こうして自分の不甲斐なさをつらつらと振り返るうちに、君はこの世から存在を消していき、私はまた、成長もせず、意味のない時間を過ごし始める。君が最後に言ったのが、「臆病者」という私への罵倒だったなら、すぐにでも手を繋いであの世へ共に行ったのに。
くべる